2011年05月16日
【創作】タイトルは決まっておりません
寝転がったまま、力任せに、何度も床を叩いた。
殴られた鼻がいつまでも痛くて、じんじんと響く度に、また悔しかった。
窓の外にちらりと舞ったものが、徐々に増えて視界を埋める。
こうしている間にも、雪は刻一刻とこの地を侵してゆくというのに。
「荒れてるね」
戸口から彼女の声がした。
抑揚の少ない、さしたる感情を表さないその声が耳朶に触れる。
ただそれだけでじんわりと目頭が熱くなる自分が余りにも情けなくて、腕で顔を覆った。
「何、泣いてんの」
丁寧に、腕が除けられる。
「先刻まで、あんなに暴れてた癖に」
「それとこれとは」
華奢な手でやんわりと腕を掴んだまま、彼女は俺を見据えた。動きに乏しく、でも深く吸い込むような、黒い大きな双眸。
「願は願の思うようにするべき」
「でも」
「私がいる」
がばり、と跳ね起きた俺の手を、彼女がぱらっと放す。目線だけがくりっと動いて合わされた。
二人で。何が出来る。
脳味噌を五秒きっかり総動員して、俺は口を開いた。
「戦う」
「どうやって」
「これで」
がっ、と手元にギターを引き寄せる。ネックを握って乱暴に立てると、振動でばいん、と音が鳴った。
弾けた弦の一本一本を辿るようにして、彼女の視点が戻る。
焦点が結び合った瞬間、口の端だけをほんの少し持ち上げて笑った。
微かな、けれど、澄んで透って揺るぎない、彼女特有の笑みだった。
----------
設定とかはまだぼんやりで、とっても断片ですが。ちょっとイキオイで書いてみた。
願はガンと読みます。昔短編で書いたカップル(お別れする話でした)のキャラクターなんだけど、彼女の方は何かツンドラ化していて、最早別キャラになっています。
殴られた鼻がいつまでも痛くて、じんじんと響く度に、また悔しかった。
窓の外にちらりと舞ったものが、徐々に増えて視界を埋める。
こうしている間にも、雪は刻一刻とこの地を侵してゆくというのに。
「荒れてるね」
戸口から彼女の声がした。
抑揚の少ない、さしたる感情を表さないその声が耳朶に触れる。
ただそれだけでじんわりと目頭が熱くなる自分が余りにも情けなくて、腕で顔を覆った。
「何、泣いてんの」
丁寧に、腕が除けられる。
「先刻まで、あんなに暴れてた癖に」
「それとこれとは」
華奢な手でやんわりと腕を掴んだまま、彼女は俺を見据えた。動きに乏しく、でも深く吸い込むような、黒い大きな双眸。
「願は願の思うようにするべき」
「でも」
「私がいる」
がばり、と跳ね起きた俺の手を、彼女がぱらっと放す。目線だけがくりっと動いて合わされた。
二人で。何が出来る。
脳味噌を五秒きっかり総動員して、俺は口を開いた。
「戦う」
「どうやって」
「これで」
がっ、と手元にギターを引き寄せる。ネックを握って乱暴に立てると、振動でばいん、と音が鳴った。
弾けた弦の一本一本を辿るようにして、彼女の視点が戻る。
焦点が結び合った瞬間、口の端だけをほんの少し持ち上げて笑った。
微かな、けれど、澄んで透って揺るぎない、彼女特有の笑みだった。
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設定とかはまだぼんやりで、とっても断片ですが。ちょっとイキオイで書いてみた。
願はガンと読みます。昔短編で書いたカップル(お別れする話でした)のキャラクターなんだけど、彼女の方は何かツンドラ化していて、最早別キャラになっています。
Posted by 秋成聖(show-akinari) at 01:58│Comments(0)
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