2010年11月03日

眠れなかった夜のために(2)

マウスから手を離して紙を受取った。
「親睦会のお知らせ」と題したそれは、しわとよれで若干頼りない姿になっている。
出欠の欄は既に大分埋まっていた。全員が出席することもまずないが、曜日毎の契約になっている者も多いから、飲み会でもなければ殆ど顔を合わせない名前も少なくなかった。

「センセイは、行かないんですかぁ?」

声のする方に顔を上げると、先程から席を外していた木之崎が戻ってくるところだった。
事務の子が訊いているのは、今見ているこれの事だろう。ややぼそぼそと喋る彼の声は此方まで届かないが、遠目に見る表情だけでも返答が「否」であるのは容易に見てとれた。

「行かないんだ?」

向かいに座るのを待って声を掛けると、彼は軽く顔を顰めた。
立て続けに訊かれたのが不快なのか、揶揄うような口調が気に入らないのかは判らないが、おそらく両方だ。

「行く訳ないじゃないですか」

さも厭そうに即答してわたしから紙を受取ると、自分の名前が記された箇所に丁寧なバツ印を描いた。


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仮閉鎖中サイトより(多分)未公開分。
時系列は不明です。(1)より前かも。
お話ありきではなく、断片的にキャラクターを追ってみるということを一度してみてもいいのかも、と思って書き始めたんだったような気がします。



タグ :創作小説

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Posted by 秋成聖(show-akinari) at 01:50│Comments(0)創作
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